この文章を考えるにあたり、創業から今までにあった様々な出来事を思い出しました。
設立当初の資金不足、企画した物件の販売不振、信頼する社員の離反など当時苦しかった出来事が良い思い出としてよみがえります。なぜ過去の苦労ばかりが思い出され、そして、美化されるのか。それは、その時々で人の温かい心に助けられたからです。

中でも印象深いのが、１９９０年代のバブル崩壊による地価大暴落でした。
購入した土地の価格が１０分の１に下がってしまったのです。それまで努力して積み上げてきた利益が全て無くなってもまだマイナスです。その土地の前に立つと足の震えが止まりませんでした。何度も損切りして売ることを考えました。

そんな中、ある信金の幹部の方に、「どこまで下がるか待ち続けてみたらどうか。しんどいけど持ち堪えたら大きな信用になる。」という言葉をかけられ奮い立ち、おかげ様で持ち堪えることが出来ました。その後、約２０年経ってから知ったのですが、その信金に方が別の信金の幹部の方にも、当社が資金に困ったら力になってあげて欲しいと頼んでおられたというのです。
“持ち堪えたら信用”という厳しくも温かい心のこもった言葉の裏で、静かに協力して頂いていたことを知ったとき、心から感動しました。

人と人との関係が希薄になってきたと感じることはあります。経済合理性や目に見えるものだけを信頼し、“心の温かみ”のような抽象的な言葉は古臭いと思われるかもしれません。しかしながら、私が感じた心の温もりを出来るだけ多くの皆様にも感じてもらいたいと願うのです。感動して心がふるえる瞬間があることを経験して頂きたいです。

当社は現在、建設業・不動産業・賃貸業・保険業、そして子会社でのエネルギー事業など住まいにかかわるあらゆる事業を展開しています。それらを通じ、人の心を温かくしたい、一緒になって喜びたい、感動を提供したいと常々考えています。
これからも社員一丸となって、心を大切にした会社であり続けます。

井田産業 株式会社
代表取締役　井田 統久